ブランディング デザイン
映画による地域デザインのはじまり
2010年、岐阜県恵那市岩村町で地域ブランディングを目的に、映画「みつけもの」を制作しました。
愛知淑徳大学の本ゼミと岩村町の市民団体「城下町ホットいわら」の共同自主制作で、70分の作品です。
地域のブランディングを「映画」によってデザインしたいと思ったきっかけは、岩村町に初めて出かけた時に見かけた「女城主の里」の看板。
戦国時代の岩村城の城主が女性だったということだけでも、十分興味をそそられました。
それから女城主についてのリサーチを始め、約1年。岩村町に必要なのは、地域の人々のシンボルと明確な方向性だと考えました。
そして、そのシンボルとなり、方向性を打ち出せるのは「女城主」そのものだと。
シナリオのテーマとブランディングコンセプト
映画による地域ブランディングデザインに必要なことは何か?
「映画のシナリオを書くこと=地域のブランディング計画を作ること」と考えています。映画を創るという行為と出来た作品を発表することで伝える行為から、地域の方向性を発信するコトをシナリオでデザインするのです。
ですから、シナリオを書く前のリサーチは、かなり周到に、過去から現在、未来にまで渡り行います。地域の歴史は、今の地域を形成していますし、現在の在り方は今後の地域を作ります。
地域を歩き回り、人に会い、さまざまな体験をする中で、この地域の核となるものは何か?を探っていくのです。
そして、これが地域ブランドのコンセプトにもなり、映画のシナリオのテーマともなるというわけです。
岩村の場合は、「知と美」を併せ持つ女城主の「強く、優しく、美しい女性たちの町」です。
「タカハマ物語」
2011年~2012年にかけて、愛知県高浜市で市民映画「タカハマ物語」の脚本・監督を務めました。
青少年育成を目的に、オーディションで集まった市民からキャスト、ボランティアスタッフを募集し、
総計2,000名の市民が参加した映画です。
この映画は、堤幸彦監督監修の元、毎週末私と制作スタッフが名古屋から高浜へ通い、市内各地で撮影、
シネハン(シナリオハンティング)から完成までの約2年の間に出来た「輪」は、現在もさまざまな形で広がっています。
「タカハマ物語」のシナリオテーマは、「熱い鬼たちが住む町」としました。
高浜市は、古くから三州瓦の産地として知られ、今も三州瓦の全国シェアは7割を占めています。その町で出会った、鬼瓦職人「鬼師」たちや、子育てグループ、まちづくりの団体など、市民の熱く一生懸命な姿は、職人の町「高浜」を原点とするからこそだと思ったからです。
映画の製作に参加した市民の変化は、まさに映画によるヒトのデザインが形になったといえるでしょう。
こどもたちは、自主性や積極性が育ち、製作途中の中間発表会や完成後の上映会では、大勢の人を前にりっぱに進行を仕切り、司会や挨拶などを行い驚かせてくれました。また撮影の手伝いも日に日に自らすべきことを探し、周りをまとめ、ユニークなメニューで炊き出しをしてくれたりこどもたちも。
大人やこれまでと違う人間関係の中で、映画製作という一つの目標を元に、創造的な活動を行うことは、やはり個々の中に眠る能力を引き出す力となるのだと実感しました。
また市内の各地をロケで回ることで、地域への知識や興味を持つこどもたちも多く、郷土愛を育てることにも有効だといえます。
映画以後
岐阜県恵那市岩村町を皮切りに愛知県高浜市、そして愛知県西尾市、長久手市で私が行っているのは、地域のコンセプトの発見とそれに基づいたストーリー創りです。
どの地域にも歴史や風土から長年に渡って培われたオリジナリティ=アイデンティティが必ずあります。
しかし、実際にまだ地域の中では認識されていないことも多いのですが、よそ者の私がその地域をリサーチしていく中で発見していく過程がとても面白い。
景観も人も入れ替わっていき、外からとの交流によって必ず変化はしているはずなのに、ずっとその地の根底に流れるその土地ならではの地脈のようなものが見つかった時には、震えるような感動があります。
そして、これを地域の内外の人にどう伝えるのか、そしてこれを知ることでこれからの地域の方向性や可能性につなげるストーリーを如何に創るかが私の仕事です。